幼小受験準備をブラッシュアップ
「保護者の意識の高さが生み出すもの」
随分昔の事ですが、私がまだ年長クラスの担当をしていた時代、小学校に合格を頂いた子供のご両親が、ご挨拶に来会された時の事です。
「もしこのようなもので良ければ教室で使ってください。多分もう子供は授からないと思うので…」と、大きな段ボールの箱を私の前に置かれました。
段ボール箱の中には、段ボールの素材で作られたパズルが大量に入っていました。
一辺が20㎝程度の正方形や、同程度の大きさの長方形や円形のパズルは、親の手作りなので、商品化できるようなものではありませんが、百種類近くはあったように思います。息子さんは確かに図形構成分野が苦手で、図形分割などのペーパーだけでなく、個別テストで出題されるパズルも苦手な子供でした。
しかしながら夏を過ぎた頃でしょうか、苦手であった構成系が得意とまでは言えませんが、苦手意識が無くなっていました。
その理由が、段ボール素材のパズルにあったことは間違いないでしょう。恐らく子供が寝た後母親は慣れない手つきで毎日のように段ボールをカッターナイフで切っていたのでしょう。指から血を流された事も一度や二度あったかもしれません。
その子も私立附属小学校の育ちを経て、社会人として活躍しています。でも幼児期にした母親の努力など知る由もありません。
親が愛情の上で行った事の多くを、幼児期の子供が知る必要もありませんし、親がわざわざ恩着せがましく述べることでもありません。しかしながら行った事は我が子の育ちの基盤に大きな影響を与えるものです。
私立や国立附属の幼稚園や小学校の出身者に、「そこを卒業した意味を理解したのはいつごろですか?」と質問すると、ほとんどの方が「小学校卒業後30年位でしょうか…」とお答えになります。
社会でバリバリに活躍している20~30歳台では気づかない「育ちの違い」は、40歳台の余裕が出てきた頃にやっと理解できるものなのでしょう。同時に家系や両親がしてくれた数多くの事や、与えてくれた人的環境の意味も見えてくる時期だと思います。
母親が用意したパズルの記憶は全く無いでしょうが、母親の「なんとか出来るようにしてあげたい!」という我が子への意識の高さは、彼に育ちの場を与えました。
その意味を、息子さんもあと十数年経った頃理解することになるでしょう。
麹町慶進会 塾長 島村 美輝
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