2019年3月21日(祝)
久しぶりの東京ドーム 電光掲示板の時計は16時30分。
3塁側一階34列に座る私はただ一人の選手だけを見つめ続けていました.
何万回と繰り返してきたであろうストレッチを続けながら、フリーバッティングの順番を待つその選手は、深夜11時半に「死んでもいい!」とはこういう事か…と思う程の経験をする事をまだ知りません。
いよいよ始まったフリーバッティング。
映像で見届けてきたキャンプでスタンドインを連発する鋭いスイングや狙い澄ましたようなバッティングは影を潜め、バラつきの多い打球が…いやいやこれはバッティング練習だから。
いよいよ試合開始、メジャーリーグの公式戦というだけでもプラチナチケットなのに、飲まず食わずで一人の選手の姿だけを追い続ける…
エリア51と名付けられた鉄壁の守備は健在ながらも、彼の魔法の杖はその輝きを失っている。せめてレーザービームだけでも見せて欲しい!
回を追うごとに「引退」の二文字を確信せざるを得ない私は、徐々に涙目になり視野がぼけていく。
内野の頭を越えることはありませんでしたが、同点の条件の中、四回の打席と八回の守備を用意してくれた監督に感謝し声援を送り続ける…
そして八回表、大声援を背に受けてライトの守備位置に走る背番号51。その背中を追い続けたオペラグラスを目から離した時、グランドにいるのは彼一人のみ。
あー、いよいよその時がやってきたのか…
一塁側ベンチ前で整列し拍手を送るアスレチックスの選手へ、メジャリーグ流の挨拶をしながら、ベンチ前に並ぶチームメイトの元へ走る51番の姿は、既に溢れる涙で見えない。
全ての選手・監督・コーチ・職員との抱擁が続く…
試合中断をしてでも偉大な選手に対する礼を尽くすメジャーならではの流儀に感動する。
51番の姿は無くなっても、決着がつくまで終わらないメジャーリーグの試合。11時を過ぎた12回裏、やっとマリナーズの勝利で決着がつく。
ところが足早に帰途につく筈の満員に近い観客は帰ろうとしない。
もう一度背番号51の姿を目に焼き付けたい!今まで夢を与えてくれたスパースターに感謝の言葉を投げかけたい!観客の気持ちは一つになってスタンドは異様な雰囲気に包まれている。
とうとうスタンドにWaveが始まった!
Waveが一周したのを見届けたかのように11時20分を過ぎた頃、マリナーズのユニフォームのまま背番号51はグランドに帰ってきた…
1974年10月14日 ミスタージャイアンツ長嶋茂雄の引退試合 場所は同じ後楽園球場
ダブルヘッダーの第一試合 三番サード長嶋は444本目の本塁打を含む猛打賞。大舞台に強い千両役者ぶりを見せたミスターは、第一試合終了後、ガードマンの制止を振り切るかのように一人グランドへ。
一塁側から歩き始めたミスターは「ファンに挨拶したい」という気持ちのままにライトへとゆっくり進む。「長嶋!」の大歓声の中、足を停めたミスターはポケットから出したタオルで顔を覆い号泣する…当時の日本人らしいウェットな引退劇は、数十年の時を経ても私の涙腺が緩ませる。
今回の主役はミスターと違い、現代を象徴するかのようなクールな表情でのグランド一周。
最後に満面の笑みで両手を挙げ、ジャンプを繰り返しながらグランドを去っていきました。
彼自身の感動は記者会見での「あんなものを見せられたら…」の言葉に繋がります。
なんと同じ後楽園東京ドームの地で再び感動の引退シーンに立ち会えるとは…
喪失感で数日間キーボードに向き合えなかった気持ちを切り替え、この幸運に心から感謝し、この文章を発信したいと思います。
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